こだわりに振り回されないために——僕が思う「プロの立ち位置」とマーケティングの話

音楽の仕事を長く続けていると、
「うちのギターを使ってほしい」
「このエフェクターを宣伝してほしい」
と、さまざまな方からご依頼やご提案をいただきます。

もちろん、そういうお話をいただけるのは本当にありがたいことです。
ただ、その流れの中で “関係が切れてしまう” ような出来事が起きることが多く、それがとても残念で……。
今日は、誤解を生まないように僕の考えを整理して書いておきます。


目次

■ 無料から有料へ移るのはただの「成長」であって、裏切りではない

宣伝やエンドース契約は、当然ながら嬉しい提案です。
スケジュールに無理がなく、そしてYouTubeの視聴者にとってプラスになると思えば、僕はできる限り柔軟に判断しています。

ただ、僕自身も毎日同じ仕事をしているわけではありません。
発信を続け、活動の幅が広がる中で、

「その時間を正式な広告枠としてお願いしたい」

と言ってくださる方が現れるようになります。

そうなってくると避けられない現実が、

「もう無料ではお受けできない領域がある」

という、ごく当たり前のことです。

これは成長した証ですし、誰にとっても自然な流れのはずです。

にもかかわらず、無料だったものが有料に変わっただけで、
成長を喜んで貰えるどころか文句を言われたり、
ネット上で嫌がらせのような態度を取られることがあります。

でも、それは本来、僕が背負うべき話ではありません。


■ “こだわり”は尊い。しかし、それを他人に強要した瞬間に苦しくなる

メーカーやクラフトマンの方々の中には、

「手作りで最高品質を作りたい」
という強いこだわりを持つ方がいます。

その姿勢は心から尊敬しています。
ですが、その道を選んだ瞬間に必ず伴うものがあります。

  • 量産ができない
  • 価格を下げられない
  • 手に届きづらくなる

これは避けられない現実であり、選んだ道の“宿命”でもあります。

それは覚悟の上で選んだこだわりのはずです。

なのに、僕が幅広いニーズに応えるために
低価格帯の商品や海外製も紹介すると、

「一緒に並べるな」
「こだわりがない」

とお叱りを受けることがあります。

お気持ちはわかります。
でもそれは僕が叱られることなのでしょうか?

他人のこだわりを他人に背負わせることはできません。
そして、そのこだわりの副作用まで僕が肩代わりすることもありません。


■ “誰のために何を届けているのか”が明確なら、戦う必要はほぼゼロ

ここが今日もっともお伝えたいしたいところです。

こだわり同士がぶつかったり、
「高い vs 安い」
「手作り vs 海外製」
のような争いが起こるのは——

マーケティングができていないからです。

マーケティングとは、「誰に届けるのか」を決める行為です。

  • どの層を狙うのか
  • 逆に、どの層は最初から外すのか

これが明確であれば、
そもそも争う相手なんてほぼ存在しません。

ルイ・ヴィトンが
ドンキホーテの似たような安いバッグに怒らないのと同じです。
住んでいる世界も、狙っている層もまったく違うからです。

音楽を始める理由も、
求めている価格帯も、
価値を感じるポイントも、
人それぞれ違います。

だからこそ——

  • 広い層に届く商品も必要
  • 一点物に命をかける職人も必要

どちらも大切な存在です。

僕もその住み分けを理解しながら、
適材適所で仲間にとって本当に良いものを選んで紹介しています。

僕が自分の都合で動いているのではなく、
“仲間の状況や事情に合わせてより良い選択を届けたい”
というだけなんです。

マーケティングとは、
戦うための武器ではなく、

争わずに仕事を続けるための地図

なんです。


■ 最後に

人にはそれぞれ、自分なりのこだわりや価値観があります。
それはとても美しいものです。

ただし、そのこだわりを
他人を攻撃するための武器に振りかざしてしまうと、
どんなに素晴らしい信念でも、目を背けたくなるものになります。

僕は、自分のこだわりに振り回されず、
誰かのこだわりに道を邪魔させず、
マーケティングという地図を持って、
自分の価値を必要としてくれる人に届けていきたい。

これからも、そんな姿勢で仕事をしていきます。
これが僕のこだわりかもしれません。
まだまだ未熟な私ですが、どうぞご理解いただきお付き合いいただければと思います。

【追記】2025.12.02
この内容をXで投稿したところ、予想以上に多くの方に読んでいただき、
「自分も同じことで悩んでいました」
「今の時代、そんなことで争う必要はないですよね」
といった共感の声をたくさんいただきました。

こだわりと仕事の距離感に向き合っている人、
そして同じように悩んでいる方がそれだけ多いのだと、改めて実感しています。

これからも、必要としてくれる方にちゃんと届く発信を続けていきたいと思います。

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