「持ち運べる」という価値
前回は、僕がヘッドレスギターに興味を持ち、自分のモデルを作ってみたいと思うようになったきっかけについて書きました。
今回は、その続きを少し書いてみたいと思います。
そもそも僕がヘッドレスギターを本格的に知ろうと思ったのは、仲間と相談しながら実際に一本購入してみたことが始まりでした。
まずは使ってみないとわからない。
写真で見ているだけでは、楽器の本当の良さも、逆に気になる部分もわかりません。
そう思って手に入れたヘッドレスギターでしたが、そこで最初に驚いたのは、音や弾き心地以前に「持ち運びやすさ」でした。
ヘッドがない。
ボディも通常のギターよりコンパクト。
その結果、全体のサイズがかなり小さくまとまる。
実際に飛行機に乗るときにも、これが大きな意味を持ちました。
通常のギターであれば、どうしてもケースが大きくなります。
預け入れにするのか、機内に持ち込めるのか、航空会社の規定はどうなのか。
ギタリストにとって、飛行機移動はいつも少し緊張するものです。
ところが、ヘッドレスギターはとにかくコンパクトです。
僕自身も、実際に移動してみて「これはかなり大きなメリットだな」と感じました。

そんな経験をした直後、ANAがこれまで楽器預け入れ時に用意していたギター・小型楽器用ケースの貸し出しを終了する、という話が出てきました。
いわゆる、青いプラダンのような専用ケースです。

この話題は、僕のStandFMではかなり反応がありました。
ただ、世間一般では、僕が思ったほど大きな話題にはならなかった印象です。
でも、僕はこのニュースを聞いたとき、すぐにヘッドレスギターのことが頭に浮かびました。
これまでにも、海外のワールドクラスのミュージシャンがツアーをする際、荷物の重量制限や航空会社の規定の変化によって、大型アンプなどを以前のように持ち運べなくなった、という話を耳にすることがありました。
日本ではそこまで極端な印象はまだ少なかったかもしれません。
しかし、LCC系の航空会社ではすでに、7kg制限や20kg制限のように、荷物の重さによって料金が変わる仕組みが一般的になっています。
そう考えると、楽器や機材の持ち運びに対する制限は、今後さらにシビアになっていくだろう。
僕は以前から、なんとなくそう感じていました。
もちろん、今でも大きくて重いコンパクトエフェクターを好む人はいます。
大型アンプに憧れを持っている人もたくさんいます。
実際、海外ではコロナ禍が明けてから、また大型アンプを開発しているメーカーもあります。
それ自体は、とてもロマンがあります。
ただ、現実的に考えたとき、誰がそれを毎回持ち運べるのだろうか、という問題があります。
有名アーティストのツアーですら、機材の運搬にはさまざまな制限があります。
ましてアマチュアバンドや、小規模なライブ、入れ替えの多いイベントでは、自分のアンプを毎回持ち込んで使うことはかなり難しくなっています。
そういう時代の流れを考えると、ヘッドレスギターのようにコンパクトで、持ち運びやすく、それでいて本格的に使える楽器には、今後ますます価値が出てくるのではないかと思います。
そんなことを考えているうちに、僕の新しいギターの制作も少しずつ前に進んでいきました。
次に向き合うことになったのが、パーツ選びです。
特に悩んだのが、ヘッド側で弦を固定する金属パーツでした。

ヘッドレスギターには、通常のギターとは違う構造があります。
ヘッドがないぶん、弦をどこで固定し、どこでチューニングするかが非常に重要になります。
この弦をロックするパーツにも、いくつか選択肢があります。
重量。
固定ネジの数。
見た目。
取り付けたときのバランス。
そして、実際に使ってみないとわかりにくいのが、サウンドへの影響です。
こういう試すことが出来ないとき、僕が参考にするのは、信頼できる高級ブランドがどのパーツを選んでいるかです。
高級ブランドは、さまざまなパーツを扱ってきた経験があります。
そのうえで、実際にプロの現場で使われているものなら、信頼度はさらに高くなります。
それに、ヘッド側のパーツはできるだけ軽いほうがいいと僕は考えています。
ネックの先端に重さが加わるということは、楽器全体のバランスにも影響します。
長く使っていくうえでの安定性や経年変化を考えても、先端部分を不必要に重くするメリットはあまり感じません。
そこで参考にしたのが、僕も大好きなギタリスト、Yotam Silberstein氏が使用しているZaletelj Guitarsでした。
Zaletelj Guitarsでも採用されている黒いパーツを参考にし、今回のギターでもその方向で進めることにしました。

見た目としても引き締まりますし、機能面でも納得できる。
このあたりから、少しずつ「自分の中の理想の形」が具体的になっていきました。
そんなふうに仕様を決めていく中で、先日、日本のレジェンドベーシストの方がSNSで楽器運搬に関する話題を投稿されていました。
内容としては、ANAの手荷物規則の改定により、コントラバスの運搬費用が以前より大きく上がった、というものでした。
以前は比較的シンプルな料金だったものが、オーバーサイズ、オーバーウェイト、さらにスーツケースなどの個数による料金が加わり、片道でかなりの負担になる。
そのような趣旨の投稿でした。
それを見たとき、僕は「とうとう来たか」と思いました。
以前から予想していたことが、少しずつ現実になってきている。
楽器や機材を持って移動することが、これまで以上に難しくなっていく。
もちろん、これはコントラバスのような大型楽器に限った話ではありません。
ギターも例外ではないと思います。
今後、ライブやレコーディング、ツアー、遠征、セッションなどで移動する機会がある人ほど、楽器に求める条件は変わっていくはずです。
良い音がすること。
弾きやすいこと。
現場で信頼できること。
それに加えて、これからは「持ち運びやすいこと」も、かなり重要な性能になっていくのではないでしょうか。
そう考えると、僕が今作ろうとしているヘッドレスギターは、単に見た目が変わったギターではありません。
これからの時代に合った、現実的なギター。

コンパクトで、扱いやすく、移動にも強い。
それでいて、プロの現場でちゃんと使える音と弾き心地を持っている。
そんなギターにしたいと思っています。
そして、もうひとつだけ余計なことを言っておくと、僕はこれから8弦ギターのように、低音域と高音域の両方をカバーできるギターが必ずもっと広がっていくと思っています。
これは何度も言っていることですが、その流れはかなり近いところまで来ている気がします。
もう一回、言っておきます。笑
ギターは、これからさらに変わっていく。
その変化の中で、自分が本当に使いたいギターを作る。
今回のオリジナルヘッドレスギター制作は、そんな思いから少しずつ形になってきています。
次回は、さらに具体的な仕様や、このギターで目指しているサウンドについて書いていきたいと思います。
音楽理論に苦手意識がある方へ
ギターは、これからさらに変わっていくと思います。
楽器の形も、サウンドの作り方も、持ち運び方も、これからの時代に合わせてどんどん変化していくはずです。
でも、どれだけ新しいギターや機材を手にしても、最後に大切になるのは「自分が何を弾いているのか」を理解できることだと思います。
コード、スケール、アドリブ、作曲、アレンジ。
これらは別々のものに見えますが、本当はすべてつながっています。
ただ、多くのギタリストにとって音楽理論は、どうしても苦手意識を持ちやすい分野です。
本を読んでも難しい。
用語を覚えても、ギターでどう使えばいいかわからない。
スケールやコードを勉強しても、実際の演奏に結びつかない。
そんな方に向けて作ったのが、
ギターで覚える音楽理論完全講座
です。
この講座では、音楽理論をただ暗記するのではなく、
「それがどこで使われるのか」
「なぜギタリストに必要なのか」
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